仕事で取り組んでいるテーマの一つに、知的資産経営という経営手法があります。
知的資産とは、企業(組織)が経験を通じて独自に獲得したノウハウなどの無形の資産(独自の強み)です。企業(組織)が自社の知的資産を自覚的に活用・強化することで、経営品質を向上させるというのが知的資産経営の基本的な考え方です。
ところが、企業(組織)を取り巻く環境は必ず変化していきます。今の強みが将来にわたって、ずっと強みであり続けるとは限りません。模倣されて陳腐化する可能性もありますし、技術革新や業界構造の変化によって、強みが無効化されてしまう可能性もあります。
知的資産経営では、過去から現在にかけて、自社の知的資産が顧客から選ばれることにどのように作用してきたか(価値連鎖)をまず明らかにし、次に将来の環境変化を考えて、将来的にはどのように価値創造していきたいか、そのためにはどのように知的資産を活用、強化、育成、獲得していくかを考えます。
この知的資産経営のフレームワークは非常に汎用性が高く、企業の業種、規模を問わず活用できるものです。
私の場合、仕事のテーマが知的資産経営ずばりの時だけでなく、ビジョン策定であっても、事業計画策定であっても、ISO9001構築であっても、マーケティング戦略であっても、知的資産の視点を必ず入れるようにしています。
さて、その知的資産経営で、将来の環境変化を考えるフェーズがあります。
企業に知的資産経営を導入する場合、最初の自社の知的資産を洗い出すフェーズは、自社のことなので、考えていただきやすいのですが、外部環境変化分析はふだんあまり意識したことがないという方も多く、スムーズに進まないことが多いです。
多くの場合、すでに顕在化している環境変化の洗い出しに留まり、事後対応的な対策立案になりがちです。(それでも、明示的にそのような分析をされていなかった企業にとっては、十分に有用なフェーズになりうるのですが…)
この外部環境分析のフェーズで使える、もっといいやり方があれば…と考えていたところ、「シナリオプランニング」という手法に出会い、最近は、外部環境分析に「シナリオプランニング」の視点を取り入れています。
「シナリオプランニング」が有用だと感じる点は、”将来の不確実性に焦点を当てる”点です。 それまで行っていた外部環境分析では、発生確率と影響度のマトリクスで整理するか、緊急度と影響度のマトリクスで整理するパターンがほとんどでした。
その方法では、発生確率が低い事象や緊急度が低い事象については、対策が後回しにされがちで、発生事象対応型の対策になりがちであったように思います。
「シナリオプランニング」では将来の不確実性に焦点を当てて考えますので、結果的に、”起こりうる不確実な将来に対して、主体的な行動を促す”ツールとなりうる点が特に有用と感じています。
現在、ある組織の「10年後を見据えた事業計画策定」という仕事のテーマがあり、この「シナリオプランニング」の考え方を全面的に取り入れて、進めています。
参加メンバーからは
「取り組むうちに、将来どうなるかという予測の問題ではなく、自分たちが将来どうしていきたいかという主体的な問題であることに気づいた」
「どのような将来であっても必ず取り組みが必要な課題が見えた」
などのご意見をいただいており、長期的な計画立案が必要な組織にとっては有効な方法論であると改めて感じています。
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