「管理職1年目の教科書」(櫻田毅)を読みました。
管理職の役割=「チームの成果の最大化」とした上で、
そのために必要な6つのルールについて解説した本。
6つのルールとは
1.迅速な意思決定のルール
2.ムダなく仕事を進めるルール
3.スピード感を生む時間活用のルール
4.成果につながる権限委譲のルール
5.高生産性人材を育成するルール
6.最強チームを構築するルール
の6点。見出しを読むだけでも有用と思うので、長いけど、
6カテゴリー全36のルールを以下にご紹介します。
1.迅速な意思決定のルール
ルール1 「慎重な人」という評価を放置するのをやめる
…「決断のデッドライン」で決めることに慣れる
ルール2 情報量が多ければ正しい判断ができると考えるのをやめる
…目的に立ち返り「決断の基準」を定義する
ルール3 「できることからやっていこう!」という安易な判断をやめる
…「問題整理」を行い効果のあるアクションをとる
ルール4 「ここまでやったから」で続ける大損パターンをやめる
…「コンコルド」の失敗と「インテル」の成功に学ぶ
ルール5 「そのうちに」という曖昧な約束をやめる
…その場でスケジュール帳を開いて日時を確定させる
ルール6 場当たり的な決断をやめる
…自分の「決断のスタイル」を持つ
2.ムダなく仕事を進めるルール
ルール7 締め切りが先の仕事は横に置くのをやめる
…「ちょっとだけ」手をつけると仕事は格段に速くなる
ルール8 プレゼン資料を1ページ目から作るのをやめる
…最初に「全体像のデッサン」を描く
ルール9 結論を出さない会議をやめる
…「決める会議」をするための3つのルールを徹底する
ルール10 行動計画を決めない会議をやめる
…メンバー自身の行動宣言で実行を確約させる
ルール11 時間差でフィードバックするのをやめる
…リアルタイム・フィードバックがチームの成功を促す
ルール12 「とにかくやってみる」という熱意のカラ回りをやめる
…「仮説・検証」のループで正解に早くたどり着く
ルール13 A4一枚にまとめるために縮小コピーする笑えない作業をやめる
…ルールで縛るのではなく仕事の趣旨を理解させる
なお「決める会議」をするための3つのルールとは
① その会議の意思決定者が誰であるかを明確にしておくこと。
② 最終的に意思決定者が下した判断を出席者は受け入れること。
③ 決定内容は後から覆されることは絶対にないこと。
の3点とのこと。
「仕事の大小に関係なく、どのような仕事でも、その件に最終的に責任を持つ人がいるはずです。
その人が意思決定者です。
課長が主催する課内の会議であれば、当然、課長が意思決定者であるべきです。
会議の目的は合意形成ではありません。『決める』ことです。
より正確に言うと、出席者の声に耳を傾けることで、意志決定者ができるだけ正しい選択をすることです。
そこで『みんなの意見は聞くが、最終的に決めるのは自分である』ということを
常にチームの共通認識としておくことが大切です。」
3.スピード感を生む時間活用のルール
ルール14 「いた方がいいから」で会議に参加させるのをやめる
…日本の会社にありがちな「あった方がいい病」を撲滅する
ルール15 返信を先送りするモラトリアム・メールをやめる
…即断・即決・即返信でコミュニケーションの好循環を生む
ルール16 仕事を止める「ボトルネック上司」をやめる
…「12時間ルール」で相手に仕事を渡しておく
ルール17 スキマ時間の活用=生産性向上という思い込みをやめる
…「集中力の使い方」でチームを前に進める
ルール18 締め切り間際の「滑り込みセーフ」をやめる
…「マイ・デッドライン」で仕事のペースを乱さない
ルール19 報告書は出張後に書く習慣をやめる
…出張前に半分書いて論点整理を図る
4.成果につながる権限委譲のルール
ルール20 任せたら口を挟まないという育成目的の権限委譲をやめる
…成果に向けて「正しい課題認識」をサポートする
ルール21 裁量権を与えることが権限委譲だと考えるのをやめる
…「裁量権」と「判断基準」を同時に与えて権限委譲と呼ぶ
ルール22 仕事の質と時間はトレードオフの関係だという勘違いをやめる
…質とは完成度ではなくニーズへの合致性だと定義する
ルール23 合理的な説明で上司を説得できると考えるのをやめる
…上司の「得」を見抜いて健全に「上司をころがす」
ルール24 「個人的には反対なのだが」と部下の前で言うのをやめる
…「これで行こう!」と戦闘モードで部下を鼓舞する
ルール25 「苦言を呈する部下は重宝される」と信じるのをやめる
…上司から大切にされる唯一の基本原則を実践する
5.高生産性人材を育成するルール
ルール26 「グッジョブ!」とほめるだけの声掛けをやめる
…成功体験から正しく学ぶための4ステップを知る
ルール27 本人任せの無責任な「失敗から学べ」をやめる
…失敗体験から正しく学ぶための4ステップを知る
ルール28 「勉強になっただろ」で済ませる学習機会のはく奪をやめる
…応用力をつけるために背後の思考過程を理解させる
ルール29 会社の評価だけに依存するのをやめる
…成長スピードを加速させる自己評価の習慣を持つ
ルール30 できない部下に時間をかけるのをやめる
…「上位人材」の頂点アップで成果を伸ばす
6.最強チームを構築するルール
ルール31 考えを「伝える」ことに執着するのをやめる
…「伝わる」話し方で行動原則を示す
ルール32 仕事の目標だけを語るのをやめる
…部下にチームの存在意義を語る
ルール33 すべてを自分で管理しようとするのをやめる
…「心理的安全性」を職場に生み出す
ルール34 「部下の主体性がない」と嘆くのをやめる
…「Yes/Noルール」で自分で考える機会を作る
ルール35 チーム内での役割を決めつけるのをやめる
…「誰もがリーダー、誰もがサポーター」という最強のチームを作る
ルール36 忙しいことをアピールするのをやめる
…「当たり前」のレベルを高めて涼しい顔で仕事をする
ルール31 「伝わる」話し方で行動原則を示す
なお、行動原則がメンバーに「伝わる」ためには、次の3点を心がけると効果的とのこと。
① 理由を伝える
② 個人のメリットを伝える
③ 日常業務の中で伝え続ける
そして、具体例として、著者のかつての上司の「迷ったときにはやる」という行動原則について
上司が以下のように伝えてくれていたことを説明されています。
① 理由を伝える
「我々は新しいことに取り組んでいる部である。
ビジネスチャンスを逃さないことが何より大切。
もし失敗しても、すぐに別の方法でやり直せばチャンスは続く。
しかし、やらなければ永遠にチャンスは来ない。
だから、迷ったときにはやるんだ」
この言葉は、部員にとって納得感も高く、
何より、失敗すること自体が責められることはないという
安心感を持つことができたそうです。
② 個人のメリットを伝える
「理想は、確信を持って、やるか、やらないかの判断ができることだ。
もちろん、ビジネスでは本当にやるべきではないときもある。
しかし、その判断を正しく行うためには『仕事のカン』を養うことが大切だ。
『やらない』ことをいくら繰り返しても『仕事のカン』は磨かれない。
やって失敗するから『仕事のカン』は磨かれる。
自分が責任を受け持つ部の中で、思う存分『カン』を磨いてくれ」
この言葉を聞いたときは、ビジネスパーソンとしての成長の機会を与えてもらったようで、
とても嬉しかったそうです。
③ 日常業務の中で伝え続ける
上司は、日常業務の中でことあるごとに
「うーん、これは迷うな。
でも、迷ったときにはやるんだ。よしやろう!」
と行動原則を聞こえるように口に出していたそうです。
そのうちに部下たちも「迷ったときはやろう!」と
お互いに声をかけ合うようになっていったそうです。
ルール32 部下にチームの存在意義を語る
チームの存在意義については、ケネディ元大統領のエピソードが紹介されています。
「かつて、ケネディ大統領がアメリカ航空宇宙局を訪問した際に
ホウキを担いだ清掃作業員に
『あなたは何をしているのですか』と尋ねたそうです。
その作業員はその問いに
『大統領、私は人間を月に送るお手伝いをしているのです』と答えたとのこと。
目的意識とは、自分たちが自分たちの存在よりも大きな何かに参加して
そこで自分が必要とされていること、
未来へ向けての何かに役立っているということ。
そういう感覚です。」
なお、ルール7はキャッシュフローコーチ用語で「今すぐ15分」、
ルール32はミッション、ルール33はAAP。
ルール15、ルール19もキャッシュフローコーチの共通認識です。
管理職ということに関わらず、ビジネスで成果を上げるための行動原則と捉えても、
役立つヒントが見つかる本と言えるでしょう。