新型コロナウイルスの影響で多くの中小企業が苦しんでおられます。
困難な状況下の中小企業にまずお願いしたいことは手元資金の確保です。
理由は、企業においては【資金ショート=倒産】であるためです。
早く動いた企業は、早期に融資を受けられ、今、落ち着いて今後の対応策を前向きに検討することができておられます。
資金調達方法としては、遊休資産の売却の検討なども必要でしょう。
そして、すぐ動いていただきたいのは、やはり金融機関からの借入です。
その中でも、まず検討したいのは日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」です。
(1) 日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」
日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、最近1か月の売上が前年比5%以上減少の場合に、利用できる融資制度です。
売上が15%減少していれば利子補給の対象になります。
(15%減少は小規模法人の場合。中規模法人の場合は売上20%以上減少が要件。小規模法人とは、製造業・建設業・運輸業などでは従業員数20人以下・サービス業・卸売業・小売業では5人以下)
最長5年の据置期間もあります。
据置期間とは、金利だけ支払えば、元金は返済しなくてもいい期間のことです。
通常、借入しても返済が資金繰りの負担になることが多いです。
元金を返済しなくていいとなると、資金繰りはぐっとラクになります。
手続きは、郵送・インターネットで申込が可能です。
日本政策金融公庫では、緊急事態宣言下の計50支店で、営業終了時間を17時から15時までに変更し、インターネット申込や、郵送による申込書類の提出を推奨しています。
●日本政策金融公庫
https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_200415a.pdf
ただし、日本政策金融公庫には現在、申込が殺到し、今申し込んでも2か月待ちという話も聞いています。
日本政策金融公庫以外で利用を検討したいのが、民間の金融機関の保証協会付融資です。
(2) 保証協会付融資
保証協会付融資には、いくつかの種類があります。
売上が20%以上減少の場合、「セーフティネット保証4号」が利用可能です。
この「セーフティネット保証4号」の利用には、市区町村の認定証が必要です。
大阪市の場合は大阪産業創造館2Fで認定証の申請を受付しています。
ただし、認定証の申請のために多くの企業が殺到し、受付のために、3時間待ち、4時間待ちの状態となっています
大阪市では、認定証の申請待ちでの感染リスク回避のため、「セーフティネット保証4号」と「危機関連保証(6項)」について、2020年4月15日から郵送による申請受付を開始しています。
●大阪市
https://www.city.osaka.lg.jp/keizaisenryaku/page/0000500712.html
また「売上は下がっているけれど、20%以上ではない」という場合には、「セーフティネット保証5号」が利用できる場合があります。
こちらは、売上5%以上減少が対象です。
ただし業種の指定があるので、自社が対象かどうかは確認が必要です。
この「セーフティネット保証5号」の認定申請については、郵送申請の対象外となっている点にも注意が必要です。
保証協会付融資の場合、借入の申込先は民間の金融機関になります。
ふだんから借入のある企業の場合は、借入のある金融機関に相談できるでしょう。
困るのは、無借金の会社です。
財務内容がどんなに健全でも、通常、金融機関はふだん取引のない企業からの突然の借入の申込を歓迎しないものです。
金融機関は一般に、リスク回避指向なので、取引のない企業からの突然の借入の申込に対しては、どうも警戒心があるようです。
ただし、今は「新型コロナウィルス感染症に係る資金繰り等相談窓口」を設けている金融機関もあります。
どうしても相談する先がない場合は相談してみてはいかがでしょうか。
(例)関西みらい銀行「新型コロナウィルス感染症に係る資金繰り等相談窓口」
https://www.kmfg.co.jp/news/kmfg_c/download_c/files/20200217_1f.pdf
(3) 福祉医療機構の無担保・無利子融資
医療・福祉関係の場合は、福祉医療機構からの融資も可能です。
新型コロナウイルスの感染症の影響を受けた福祉・医療関係施設に対する、無担保・無利子の融資を行っています。
●福祉医療機構
https://www.wam.go.jp/hp/fukui_shingatacorona/
(4) 固定費削減
資金調達と合わせて、固定費削減も検討したいところです。
固定費の中で特に大きいのは家賃でしょう。
国土交通省は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、飲食店等のテナントの賃料の支払いについて柔軟な措置の実施を検討するよう、不動産関連団体などに要請しています。
●国土交通省
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000201.html
ただし家主さんも売上低下は痛手です。
国土交通省からの要請はあくまで要請であって、強制力はありません。
依頼するときは「この場所で営業を続けたい」という意思を誠意をもって伝え、依頼することが必要でしょう。
そして、できれば合意したことを書面で残しておくことができれば、より安心です。
他には、活用度の少ない定期会費や効果のよくわからない広告費等々も見直しをしたいところです。
企業によっては、保険料が多額である場合もあるでしょう。
保険会社については、解約するという選択肢以外に契約者貸付を受けることも可能です。
解約せずに契約者貸付を受けるメリットは保証を継続できる点です。
保険会社によっては保険料の払込の猶予措置もあるようです。
一度、相談してみられることをお勧めします。
(5) 社員の安全対策
資金確保と並行して、社員の安全の確保策も重要です。
・在宅勤務にする。
・事務所を二分割して、感染リスクを軽減し、事業継続する。
・思い切って、一定期間休業する。
などの方策が考えられます。
休業の場合は、雇用調整助成金も利用できます。
休業手当の9/10の補償が受けられるという制度です。
資金調達と社員の安全性確保ができたら、コロナ後に自社は何をするのか。
今から考えておきたいものです。
長期戦になるかもしれないけれど、いつかはコロナも収束します。
コロナ収束後は、元の社会に戻るのではなく、多くのことが変化していることでしょう。
・リモート・デジタルの進展。
・中小企業においても内部留保重視や計画的経営へのシフト。
・有事への対策強化
・人の価値観の変化
などなど。
先を見て、自社はどんな企業になっていたいのか。
社会の中でどんな存在になっていたいのか。
この先に希望はきっとあります。