以前に、研究開発型のベンチャー企業さんの知的資産経営報告書の作成を
ご支援させていただいたときのことです。
作成したレポートを取引金融機関に見せたところ
「そういう事業をされているのですね!」
との反応が返ってきたそうで、その影響かどうか、金利が下がったそうです。
「知的資産」とは何か。ひょっとしたら、聞き慣れない言葉かもしれません。
よく間違えられるのが「知財」です。
「ウチには知財はないので…」、そんな風に言われることも多いです。
「知的資産」とは知財のことではなく、その会社の競争優位性を
生み出している、強みのことです。
たとえば、技術力であったり、商品開発力、ノウハウ、スキル、しくみ、
体制、人材の質や厚み、顧客基盤、ネットワーク、蓄積してきたデータ等々…、
競争優位を生み出し、将来のキャッシュフローの源泉となる強みをすべて
「知的資産」と言っています。
競争優位とは「お客様に選ばれることにつながる他社との違い」です。
なので、「お客様に選ばれることにつながる他社との違い」を
知的資産と考えると、考えやすいかもしれません。
知的資産経営という経営のやり方は、もともと経済産業省が提唱したものです。
その背景としては、将来性のある企業が財務内容が悪いばかりに、
資金調達ができないとしたら、地域経済や日本経済にとって損失だという
考え方があります。
そこで、財務内容が今、仮によくないとしても、将来キャッシュフローの
創出につながる強みを持つ企業であれば、銀行から適切な評価を
受けられるべきだ。
そのために、企業側としては、自社の強みを適切に把握し、対外的に開示
できるように整理しよう。 それが知的資産経営のもともとの発想です。
また、同じ問題認識から、金融機関は、企業の決算書だけを見るのではなく
企業の事業内容や強みをしっかり評価して、資金供給するべきだ、
という考え方が事業性評価、事業性評価融資という考え方です。
さて、先週の3月15日、ある新法案が閣議決定されました。
日本経済新聞などでは報道されなかったようですが、事業性評価の実効性
を高めるための大きな一歩と言える法案です。
法案の名称は「事業性融資の推進等に関する法律」案。
「企業価値担保権」という新たな担保権がその法案の内容です。
これは、金融庁が「事業成長担保権」という名称で法制化を目指して
いたものです。
具体的には、ノウハウ・顧客基盤等の無形資産を含む事業全体を担保とする
ことで、成長企業が資金調達できるようにするという事がその狙いです。
ノウハウ・顧客基盤等の無形資産とは、つまり「知的資産」です。
新制度の開始は2026年の見込みのようです。
企業の側もこれまで以上に、自社の競争優位性、つまり、将来キャッシュフローの
源泉である自社の強みを把握し、開示する努力が求められると言えるでしょう。
企業価値担保権についてご興味がある方は、以下の記事も合わせてご参照ください。
「企業価値担保権とは?事業成長担保権との違いは?わかりやすく解説」
https://vision-cash.com/chiteki/corporate-value-security-interest/