ゼロゼロ融資が2021年3月末で終了します。
ゼロゼロ融資とは
ゼロゼロ融資とは、コロナ禍で苦しむ中小企業のために、2020年5月に新設された融資制度です。
融資金額は上限4,000万円、融資期間は最長10年間で、据置期間は最長5年。
月の売上が前年比15%減の法人の場合、当初3年間、実質無利子・無保証料となる制度です。
なお、「ゼロゼロ融資」という名称は通称です。
実際は都道府県の制度融資として実施されており、名称は都道府県別に違っています。
大阪府では「新型コロナウイルス感染症対応資金(保証料等補助型)」という名称です。
2020年5月1日に上限3,000万円で開始され、6月に上限4,000万円となり、2021年1月29日には
融資上限額が6,000万に引き上げられました。
名称 | 民間金融機関での実質無利子・無担保・据置最大5年・保証料減免の融資(通称ゼロゼロ融資) |
融資上限額 | 4,000万円 → 6,000万円(2021年1月29日) |
返済期間 | 10年以内 |
据置期間 | 5年以内 |
金利 | 都道府県別に固定金利(大阪府では1.2%) |
保証料 |
都道府県別に設定(大阪府では年0.85%・経営者保証免除対応を受ける場合は年1.05%) |
金利・保証料の軽減 |
■軽減内容 ・金利:当初3年間 ・保証料:全期間
■軽減対象者 ・個人事業主(小規模企業者のみ) 売上高が5%以上減少の場合は、保証料なし、金利当初3年間なし
・法人、個人事業主(小規模企業者以外) 売上高が15%以上減少の場合は、保証料なし、金利当初3年間なし 売上高が5%から15%未満減少の場合は、保証料半額補助 |
対象者 |
セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証の認定を受けていること |
※大阪府のゼロゼロ融資「新型コロナウイルス感染症対応資金(保証料等補助型)」については以下の大阪府サイトをご参照ください。
一方で、このゼロゼロ融資については金融機関が貸出残高を伸ばす営業手段に使われているのでは?
という批判もありました。
なぜなら、無利子・無保証料なので、企業に対して提案しやすく、かつ金融機関もリスクがないためです。
結果的に、保証協会付融資が増加し、同時に、プロパー融資が減少。
金融機関と企業の関係性が希薄になっているのでは?
本来、必要な本業支援がなされていないのでは?との指摘もなされています。
また、多くの都道府県での金利が1%前後であるのに対し、奈良県では、2.175%という高い金利を設定。
企業を助ける趣旨のゼロゼロ融資が地元金融機関の収益向上に使われたとの指摘もありました。
このゼロゼロ融資が3月末で終了します。
では、4月からの融資制度はどうなるのでしょうか。
新型コロナウイルスの影響に苦しむ中小企業を対象とする2種類の融資制度の新設
4月からは、新型コロナウイルスの影響に苦しむ中小企業を対象とする融資制度として、
2種類が新設されるようです。
それが「伴走支援型特別融資/新型コロナウイルス感染症伴走支援資金」と
「事業再生サポート融資(感染症対策枠)」の2つです。
特徴は両者とも「金融機関による継続的な支援を前提」としている点です。
おそらく、ゼロゼロ融資で指摘された弊害を踏まえてのことだと思われます。
伴走支援型特別融資/新型コロナウイルス感染症伴走支援資金とは
「伴走支援型特別融資/新型コロナウイルス感染症伴走支援資金」は市町村の認定を受け、
「経営行動計画」を作成して、経営改善を進める中小企業等が対象です。
融資限度額が、4,000万円であること、貸出期間の最長10年、据置期間の最長5年はゼロぜロと同じです。
セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証、いずれかの認定を受けていることが必要な点も
ゼロゼロと同じです。一方、違いは以下の3点です。
(1)今後取り組む事項(アクションプラン)を作成すること
(2)⾦融機関が継続的な伴⾛⽀援をすること
(3)無利子・無保証料ではないこと
この3点です。
無利子・無保証料ではないことについては、⾦利は⾦融機関所定の金利、保証料は原則0.85%。
保証料は、売上減少要件▲15%を満たす場合には、事業者負担分が0.2%になるようです。
名称 | 伴走支援型特別融資 |
融資上限額 | 4,000万円 |
返済期間 | 10年以内 |
据置期間 | 5年以内 |
金利 | 金融機関所定 |
保証料(事業者負担分) | 0.2%(原則0.85%) |
売上減少要件 | ▲15%以上 |
対象者 |
・セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証の認定を受けていること ・今後取り組む事項(アクションプラン)を作成すること ・金融機関が継続的な伴走支援をすること |
また、ゼロゼロ融資は無担保でしたが、伴走支援型特別融資では、担保は必要に応じて徴求とされています。
経営行動計画とは
伴走支援型特別融資を受けるためには「経営行動計画」の作成が必要です。
この経営行動計画については、以下の内容が必要とされています。
・計画期間:原則5事業年度(最短3事業年度)
・記載事項:①経営に係る現況 ②課題 ③課題を克服するための取組事項
融資を受けた企業は、作成した「経営行動計画書」を実行し、金融機関へ定期的に報告する必要があります。
報告頻度は少なくとも「四半期に1回」です。
金融機関は少なくとも四半期に1度は以下3点を行うこととされています。
① 中小企業の経営状況の確認
② 経営行動計画の実行状況等の報告を受領
③ 経営支援の実施
「経営行動計画の実行状況等の報告を受領」とされているので、書面での提出が必要と思われます。
また、金融機関は年1回、信用保証協会に以下3点を電子データで報告することとされています。
① 経営行動計画の実行状況
② 財務状況
③ 金融機関の経営支援状況
※中小企業庁「経営行動計画書」のサンプル(PDF形式:122KB)
事業再生サポート融資(感染症対策枠)とは
「事業再生サポート融資(感染症対策枠)」は債権者全員の合意を得た計画に従い、事業再生を
進める企業が対象です。融資限度額は、2億8,000万円です。
貸出期間は最長15年、据置期間は最長5年。
⾦利は⾦融機関所定、保証料(事業者負担分)は0.2%とされています。
名称 | 事業再生サポート融資(感染症対策枠) |
融資上限額 | 2.8億円 |
返済期間 | 15年以内(⼀括返済の場合1年以内) |
据置期間 | 5年以内 |
金利 | 金融機関所定 |
保証料(事業者負担分) | 0.2%(原則0.85%) |
対象者 |
中小企業再生支援協議会や経営改善サポート会議等の支援により作成した事業再生計画を実行すること |
どちらの制度でも、金融機関が継続的に進捗状況の確認や経営支援をすることが要件とされています。
ゼロゼロ融資では、要件を満たす企業は比較的容易に借入できましたが、
今後は「経営行動計画」の策定や金融機関から進捗確認を受けることが要件になります。
企業側も経営改善に向けた一層の努力が求められるとともに、どの金融機関をメイン行とするのか、
その見極めが必要と言えそうです。
※参考資料:経済産業省「令和2年度第3次補正予算案の事業概要」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kihonmondai/seidsekkei/download/006_2_2.pdf
※中小企業庁「中小企業に対する金融機関の伴走支援や早期の事業再生を後押しするための信用保証制度」(2021年3月25日)