統合報告書でビジョンを明確にする

今回は統合報告書のお話です。統合報告書とは何でしょうか。

一言でいうと、財務情報と非財務情報を統合した報告書で、将来の価値創造プロセスを示したものです。

株式会社には、決算公告の義務があります。また上場企業などでは、金融商品取引法に定める有価証券報告書の提出義務があります。これらは、投資家に対して、投資判断に必要な情報を提供することを目的としています。

一方で、決算書が示している内容は過去の事実に過ぎないため、決算書だけでは、企業の今後の戦略や成長性の判断が十分にはできないという問題点があります。

また、多くの企業が有価証券報告書などの財務情報とは別に、CSR報告書や環境報告書を作成しています。分野別に複数の報告書が存在している状況では、その企業の全体像がかえって見えにくいという問題点もあります。

こうした背景から、財務情報と非財務情報の両方を統合した統合報告書が注目されるようになっています。

統合報告書の記載事項のうち、非財務情報の中核をなす部分が、知的資産を含む経営資源をいかに活用して将来の価値創造を行っていくかという中長期的な経営戦略です。

将来の価値創造のためには、財務資本や知的資産などの経営資源が必要になりますし、将来の価値創造の結果が将来の財務情報になるわけですから、両者は密接に関連し合っています。

知的資産経営報告書でも、知的資産をいかに活用して価値創造するかについてのストーリーを描いていきますが、多くの場合、財務情報は記載されないことが多いです。

知的資産経営に取り組む目的はさまざまですから、必ず財務情報が必須とは言えませんが、経営戦略立案が目的の場合は、財務情報まで含めて考えることが望ましいと考えています。

数値化しないことには、目標を定量的にマネジメントできないですし、企業における数値のもっとも重要なものの一つはやはり財務情報であるからです。

さて、この統合報告書、今のところ、大企業中心に導入が進められています。(報告書の主な目的が投資家への情報開示なので、当然でもあります)

ですが、自社の方向性や経営戦略を明確化し、開示する相手は投資家だけとは限りません。

将来の価値創造の実現に向けて、従業員も含めた関係者に自社の考え方とこれから進む道を明らかにするという活用方法もあるのではないかと思っています。

今回、堺市でプラスチック製品製造をされている有限会社藤川樹脂様が統合報告書を作成され、その支援をさせていただきました。

「思ったカタチがすぐ目の前に」をキーワードに、プラスチック製品の試作から量産まで一貫して取り組むことで、顧客提供価値を高めようとされている、社長の想いが伝わる報告書になったのではないかと思っています。

有限会社藤川樹脂ホームページ
http://fujikawa-jushi.co.jp/

有限会社藤川樹脂 統合報告書 2014年「小さな町工場の挑戦。」
http://fujikawa-jushi.co.jp/wp-content/uploads/fujikawa2014.pdf


藤川樹脂統合報告書2014

統合報告書で示された経営ビジョンをぜひ実現していただきたいです。